かつてワタシが愛した女性日記作家「風呂屋あやか」さんのこと

まだブログが今のように世間に浸透するよりずっと前、ワタシはある女性日記作家さんの日記をこよなく愛し、毎回毎回更新を心待ちにしていました。
後にライブドアに買収され、ライブドアブログとして生まれ変わる前の「MEMORIZE」という日記サービスで「あやかは風呂屋のプロ」という日記を書かれていた、「風呂屋あやか」さんです。
彼女はタイトルやHNからもわかるように、ソープ嬢という仕事をずっと生業にしていた女性です。日記では仕事上での出来事、日常、などなどを綴り、サイトでは風俗やソープの仕組み・仕事をよく知らない人(男女両方、遊びたい人/働きたい人の両方)のために基礎知識をまとめて公開していました。


彼女の文章によると、その日の食べ物にも窮するような貧しい中で育ち、夫が蒸発した後3人の子供達を養って高校より上の学校に通わせ、子供達が巣立つのをきっかけにソープの仕事を引退し、それにあわせて日記もサイトも完全に畳まれています。長い間サイト・日記を開設されていたことが幸いして、完全ではないですがInternet Archiveにはその断片が残っていました。*1
ちなみに彼女が子供を養っていたとか、そのくらいの年齢だということをはっきり明かしたのは、日記を畳む直前のことでした。それまでは彼女の日記のファンであっても彼女をただ「陽気なソープのお姉さん」と思っていた人は多かったでしょうし、ワタシもそのひとりでした。


あれこれワタシが説明してもしょうがないし、彼女の文章・人柄をワタシが愛していた理由はワタシの文章なんかでは伝えられないので、興味のある方はInternet Archiveのリンク先を見てみてください。上に書いた基本情報はあくまで基本情報として、変に「苦労に耐え抜いた女」とか、そういう先入観は何も持たずに見てほしいです。


「今回の騒動」に、ワタシは首をつっこむつもりはありません。
そしてワタシの中にも差別心はあるし、そもそも差別云々以前に非常に性格が悪いし根性も腐りきって発酵して糸引きまくってることも十分自覚しています。ですから偉そうなことは何一つ言えないという自覚もあります。
それでも、この騒動を見ているうちに彼女のことを思い出し、思い出すたびに職業「のみ」で人を簡単に差別・軽蔑し、侮辱することを不毛なことだと思えてなりません。人にはそれぞれの信条や立場があるし、女としても人間としてもケツの青すぎるワタシには想像もつかない事情のもとに立っている思想もあるのでしょうから「悪い」とは言い切りませんが、まず「個人」を見ようとしないことが、ただただ「不毛」だと。
彼女も仕事のことをはっきり公開していたことで心ない人達からひどい誹謗中傷、嫌がらせを受けていたようで、仕事上でも「お客」に差別的な言葉を吐きかけられることも少なくなかったそうです。彼女はそれをすべて「ネタ」として面白おかしく書いていましたが、実際の心中まではただのいち日記ファンだったワタシにはわかりません。


当然リンク先を見ての感想は人それぞれでしょうし、ワタシからは何の感想も強要するものではありません。ただ、ネットで公開していたすべてを閉鎖されて長い時間が経ち、いずれネット上の藻屑と消え、そのうち誰からも忘れ去られてしまうであろう彼女の存在を、この騒動とは関係なく、しかし、この機会にここに書き残しておきたいと思ったのです。
もっとも彼女にとってはよりにもよってこんな陰気クサい書き手にウダウダ書き残されては「よけいなお世話!」かもしれませんが、ワタシにとって彼女はネット上でしか知らない人物というとてもあやうく儚い存在でありながらも、それ以上に思えるほど強く印象に残っている存在…って、ああそんなんじゃいよいよもって湿っぽすぎるので、このエントリはワタシにとって印象深い人物についての備忘録に毛が生えたくらいのものだと思ってください。



日記:「あやかは風呂屋のプロ」(過去のログもある程度見られる模様)
http://web.archive.org/web/20040618183904/www.memorize.ne.jp/diary/19/50715/ *2
http://web.archive.org/web/*/http://www.memorize.ne.jp/diary/19/50715/
http://megalodon.jp/?url=http://web.archive.org/web/20040618183904/www.memorize.ne.jp/diary/19/50715/&date=20070317123223  (魚拓)



サイト:「あやか温泉」
http://web.archive.org/web/*/http://web.puresilk.ac/~cantik

*1:結構テキスト界では有名だったから2chでもしばしば語られてたんですが、そのログまでは見つけきれませんでした

*2:このURLからが一番スムーズに見られるようです