「あるひとりの友達」


常に孤独と隣どうしの高校時代が終わり
また心許せる友達のいない日々を送るのかと
絶望しかかる気持ちを振り切り賭けに出た




決死の覚悟で声をかけた3人のひとり
最初は他の友達と一番仲が良かった
4人で入ったサークル活動の傍らで
いろんなことを話すうち仲が深まっていく
価値観が似ていて抱えてる悩みも似てる
文章を書くのが大好きなのも同じ
そして周囲の友達への疑問や不満でさえも


謝恩会にはふたりだけ出ずに語り合った
しかし就職してしばらくしてのこと
ある日ぷっつり連絡が途絶える
彼女から拒否されていることを知った
ワタシがいい加減で自己中心的すぎたのだ
それだけならまだしも全く自覚のないままに
彼女にとってはどうしても許せないことを
してしまっていたという事実を後で知る


卒業するとき
ワタシは彼女以外の友人を捨てたつもりでいた
けれど彼女はワタシも一緒に捨てていたのだ


ショックだった
そして愚かな自分を恨んだ
何も出来ぬまま時はただ流れていった
1年以上経過したある日のこと
このままでは一生後悔するだろうと
手紙を書いた
封筒に収まりきれないほど長い長い手紙
自分がしてしまった愚かなことへの謝罪と
就職してからこっちのやぶれかぶれの日々と
そしてせめてもう一度でも会いたい気持ち


数ヶ月が経った
携帯に見知らぬアドレスからのメール
彼女からのものだった
「まだ何とも言えない」そんな堅い文章
それでも飛び上がるほど嬉しかった


その数ヵ月後彼女も郷里に戻る
「会うならちゃんとこっちで仕事を決めてから」
でなきゃけじめがつかないなんて真面目な彼女らしいな
まだ会えない
そこから再び長い時間が過ぎていく


そしてようやく会える日
後ろから呼ばれて振り向いた
数年ぶりの再会
もうないだろうと一度は諦めかけた再会


家を出てから待ち合わせの場所までずっと
「ひさしぶり」の言葉を喉の奥に用意していた
でもそれは出ていくことはなかった
彼女は化粧の仕方も服の趣味も変わり
ロングヘアーをばっさり切っていたのに
ワタシも「あの頃」より随分垢抜けたのに
彼女の口からもその言葉を聞くことはなかった


「昨日も会ってまた今日も会ってる」
としか思えなかった
なーんだ感動的な再会じゃないじゃんなんて
顔つき合わせて思いきり笑いあった


「あの頃」夜遅いバス停で話し込み
また明日ねと手を振った次の日のように


大切な友達は時間軸の外にいたことを知る
会う人会う人との間に壁を作り作られ続ける
そんな愚かなワタシをついに見かねて
神様がくれたプレゼントだと思うことにしてる







非コミュ」のワタシにとっての現在唯一の、そして大切な大親友との話です。
「おばあさんになってもきっとこんなふうに仲良くしてるんだろうね」と言い合っている彼女以外、リアルでの友人はひとりもいません。
一度骨組みを作るつもりで淡々といくつもの事実を書き出していたら、逆にこのままひとつのエントリにしてみたらどうだろうと思い付き、いつもとは全く違う形式の文章になりました。たまにはこういうのもね、と。


社交的な人から見れば、なんと燃費の悪い人との付き合い方だろうと笑われることでしょう。しかし、きっとこの先もワタシはこういう形でしか、人と関係を結んでいけないんだろうなとうっすら思っています。そしてワタシ自身、「それでいい」という気持ちでいます。


ワタシは「どうして非コミュにも友達がいるんだ?」という問いに適切な気の利いた答えを出すことはできません。ただ、そんな疑問を持つ人にとってこの経験がなんらかの形でのヒントになればいいなあという淡い期待を込めつつ。